ある日1




「んん・・・むぅ・・・。」


「はあ・・・。」


今日も起きた。
体がひどく重く感じられる。
また、なんでもない一日がはじまるのだ・・・。


「はあ・・・。」


ため息も出るというものだ。
今日は一段と体が重いような気がする。
いつも早めに起きるように目覚ましをセットしているので、 もう5分寝ようといつものように抱き枕に抱きついた。


「ん?」


なんだか抱き枕の抱き心地が違う。
なんかこう・・・いつもより硬くしっかりしていて、細く、また熱を帯びている。


「!?」


自分の状況をあらためて見てみて、固まる。
そこは、見たこともない部屋で自分のベットではなかった。
そして何より、自分の横で・・・
狼人・・・そう、狼人が寝ているのだ。
どうやら僕は彼の腕に抱きついていたようだ。
彼の白い体毛が朝日に輝いている。


僕はひどく混乱した。
必死で自らの記憶をたどってみる。
しかし、いくら思い出そうとしても何もこの状況につながるものは何も出てこない。
昨日、普通に自分の部屋で宿題をしてベットに入って寝たのになあ。


と、ふとその白狼人の横にあるものを発見する。
そこにはもう一人赤狼人がいたのだ。
しかも、いかにも逞しい(男であろう)白狼人に寄り添う形で曲線美な女を感じさせる (胸もあるし)赤狼人が抱き寄せられている状態である。


これはどう見ても・・・。
そういう邪魔者的な雰囲気なのである。
なんかものすごく恥ずかしくなって、とりあえずそちらは見ないように、 周りを見回してみた。
部屋はそれ自体も、また家具も木製で、6畳ほどでベットの脇に小さなテーブルとタンスがある だけの質素な部屋だった。


あたりは小鳥のさえずりが聞こえるだけで静まり返っている。
何か居づらいものを感じて、とりあえずベットから出る。
やや寒い空気を感じ、木の床は裸足には冷たかった。
ドアノブをそっとまわし、音を立てないようにドアを開ける。
しかし、少しさび付いた蝶番は"ギッー"ときしんだ音をたてる。


「・・・おまえ、誰だ。」


びくっと体が震え、一気に心拍数が上がる。
とりあえず何か返事をしなくては・・・。
ゆっくりと振り返ると、白狼人が首をあげてこちらを見ている。
その黄色い瞳の強い眼光に射すくめられる。


「え・・・やっ、あのー・・・。」


と、何も言葉が出てこない。
すると、


「なんか・・・、ずげえ・・・いい匂いが・・・する。」


彼は呂律もたどたどしく、むっくりと立ち上がると、こちらに歩いてきた。


「え、いやっ・・・あの・・・。」


僕は後ずさるが彼にがっちりとつかまれ引き寄せられる。


「あー、・・・やっぱり、おまえだ。」


彼はくんくんと首筋あたりをにおうと、ぐいぐいと僕をベットに引っ張っていく。


「あっ、あのぅっ。」


僕の小さなささやきは聞こえないようだ。
ぼんやりしているから覚醒しているかどうかも怪しい。
ベットまでくると、彼は赤狼人を蹴り飛ばして、ベットから落とした。
ガタンッっと鈍い音がして、彼女が飛び起きて猛烈に怒り出す。


「ちょっと、なにすんのよっ!!!」


まあ、当然の反応だ。
しかし、彼は完全に無視して、ベットに倒れこむ。
っと、僕の視界もグラッっとゆがみ、気づくとベットに横たわって、彼の腕に捕らわれていた。
彼女は激昂し、服を持ってさっさと出て行ってしまった。


「あの、・・・いいんですか?」


とりあえず聞いてみるが、彼はすでに夢の中らしくすうすうと寝息が聞こえる。


「はあ・・・。」


そうすればいいのかわからず、起きようとするが彼にがっちりと抱きしめられていて、 身動きが取れない。
初めての感覚にドギマキしながらも、これからのことを考えると、 不安で胸が張り裂けそうになる。



ここはどこなのだろうか・・・。
これからどうすればいいのだろう・・・























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