犬 ティータイム(閑話)




こぽりっ。


気泡が薄茶色の液体を駆け上っていく。
俺はしゃがんでその光景を見ていた。
いつ見ても面白い。


二つの容器を組み合わせ、
ひょうたんのような形をした透明な容器(ガラスっていうのか?)を眺めながら
ついつい尻尾が振れてしまう。
上の容器から下の容器へゆっくりと茶色い液体が降りていき、完全に下の容器に集まる。
俺は主人に完成を伝えた。
すると、主人はコップを二つ持ってやってくる。
俺の大好きな主人とのティータイムがはじまった。




コップに液体を注ぐとふんわりと芳ばしい薫りが部屋中に広がった。
この匂いは嫌いではない。
主人はスプーンを使って砂糖を入れる。


主人はいつも白い粉を一杯だけ入れて混ぜる。
俺は主人からスプーンを渡してもらうと、
いつものように躊躇うことなく白い粉を四回すくって混ぜ合わせた。


入れすぎなんじゃない?
と主人は言う。
だが、この液体は苦くてこれくらいは入れないと飲めない。
そのことを伝えると主人は忘れてたとビンを取り出してきた。
砂糖を取りすぎると健康によくないからと、
昨日、主人が買ってきてくれた人工甘味料だ。
サッカリンとラベルを貼られたそれを俺は苦々しく見つめた。


主人の健康を気遣ってくれる心遣いはありがたいのだが、
俺はその変な苦味が加わるそれをあまり好むことはできなかった。
苦味なんかしないのにと主人はコーヒー(二杯目)を飲む。
人間には感じられない微弱な味なのかも知れないが、
俺の舌は確かにその苦味を感じてしまうのだ。


仕方がないなぁと主人は別のビンを取り出した。
実は昨日の反応を見て、新しいのを買ってきていたのだと言う。
アスパルテームとラベルの貼られたそれを、
俺はいつものように四杯入れる。


………主人の愛情はとんでもなく甘い。
……でも、まあ俺にはこれぐらいが丁度いいかな。


甘い分、減らすんだよ量をっ!
……主人よ、痛いぞ。
俺は高かったのにと怒っている主人に耳を伏せながら、
ズズズッ、と甘い液体を堪能した。



あとがき

市販のカロリーオフタイプを使え、って感じですねw
こういうペットがいればさぞかしティータイムは
楽しいのだろうと思いまして。
この後、主人は甘いキスをもらうのですよ。

ところで、えっと;
たしか、サッカリンよりアスパルテームのほうが割高だったはず;;

執筆 2007/09/08

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